『serial experiments lain』は1998年に放送されたアニメ作品で、現在でもカルト的な人気を誇っています。
ネットワーク上の仮想空間「ワイヤード」で起こる不可解な事件に知らず知らずのうちに関わっていく少女・岩倉玲音を主人公としたサイコホラー作品です。
前回の記事では、第4話「Layer:04 RELIGION」のあらすじをご紹介し、考察ポイントを解説しました。
第4話では、ワイヤードでの出来事が現実世界に影響を及ぼす事件が発生し、その原因は謎の組織「ナイツ」によるものであると示唆されました。
ナイツと岩倉玲音がどのように関わっていくのか、も気になるところです。
今回は、第5話「Layer:05 Distortion」のあらすじ・見どころ・考察ポイントを解説します。

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第5話のあらすじ


それではまず、第5話のあらすじを見ていきましょう!
「Layer:05 DISTORTION」 監督:中村隆太郎 演出・絵コンテ:村田雅彦 脚本:小中千昭
渋谷の繁華街。
『serial experiments lain』第5話「layer:05 Distortion」
美香は車が行き交う交差点のど真ん中にたたずむ少女を見つけた。
美香が振り返り、玲音が見上げている巨大画面を見上げた。
そのノイズまじりの巨大画面に玲音の顔が映っていた。
渋谷の繁華街を歩く美香は、受け取ったポケットティッシュに書かれた不気味なメッセージにうんざりしていた。
そんな中、交差点の真ん中でたたずむ妹・玲音を目撃する。玲音を見失いかけた時、顔を上げるとそこには街頭テレビに映る玲音の姿があったのだ。
自分の身の回りに不審なことが起こっていると感じた美香は、一目散に家に帰る。するとそこにはもう1人の美香の姿があったのだ。
もう一人の自分と目が合ってしまった美香は、その場で天使のような姿になって消えてしまう。
一方、玲音は自分の部屋に代わる代わる現れる人形、神像、母親、父親と会話し、ワイヤードに存在する神が預言を実行しようとしていることを知る。
第5話のストーリーは、美香のパートと玲音のパートが交互に登場する入り組んだ複雑な内容となっている。
第5話の見どころ
『serial experiments lain』全13話の中でも屈指の複雑かつ難解な回となった第5話。
ここでは、第5話の見どころを2点ご紹介します。
神と玲音の対話
人はもはや進化しない生物ではないのか。
小中千昭『lain―scenario experiments』ソニーマガジンズ、108頁
ガンの発生率が他の生物と比べて極端に少ないネオテニーである人類は、最早進化出来ないとする学説がある。
もしそれが本当だとしたら、何と愚劣な生物に進化してしまったものだ……
第5話は、男性の声による上記のモノローグから始まります。実写の街並みをデジタル加工した映像が流れ、素朴で大人な雰囲気が醸し出されます。
実写映像は次第にフェードアウトし、アニメーションに切り替わります。そしてモノローグだった男の声は、そのまま街を歩く玲音に語りかけます。
男は、これ以上進化できない人間を憂いつつ、それを脱出する「出口」が”ワイヤード”であると話します。
そして男は、自分の正体を「神様」と名乗って去っていくのでした。
このシーンはモノローグとして学説を紹介し、自然な流れで物語に入っていくという秀逸なシーンとなりました。
人間がこれ以上進化できない”ネオテニー”とする説も興味深いです。
また、玲音に対して神を名乗る人物の出現。ワイヤードの中に神を見出す存在「ナイツ」との関係も気になるところです。
美香に迫る不気味なメッセージ
第5話は、ホラー要素がかなり強い回でもありました。
玲音の姉・美香は、渋谷の繁華街でポケットティッシュを受け取ります。
そのティッシュには「冥府は溢れている。死者共は行き場を失うだろう」と血で書かれていたのでした。
また、行き先々で「預言を実行せよ」という言葉を目撃し、最終的にはドッペルゲンガーのようににもう一人の自分と出会って消えてしまいます。
第5話では、美香の視点で不気味に迫るホラー展開を楽しむことができるでしょう。
また美香は、玲音がサイベリアで出会った小学生・タロウから「ナンパしていいっすか?」と話しかけられています。
タロウのあどけない言い方と文言のギャップも必見の愛らしいシーンです。
第5話の考察
ここでは、第5話「Layer:05 DISTORTION」の考察ポイントを3点、ご紹介します。
美香が消したのはナイツの仕業か?
美香は、不気味なメッセージが描かれたティッシュを受け取った直後から不吉なことが連続して起こり、最終的には姿を消されてしまいました。
これは前回も、ワイヤード内のゲームを操作して事件を起こした「ナイツ」による仕業であると思われます。
美香は家で夕飯を食べていた直後、渋谷の交差点に飛ばされてしまいます。そして呆然とした美香が座り込んだ道路には、横断歩道ではなく何かの模様が描かれていたのです。
これは「ナイツ」の紋様であるコンパスでした。
なので、美香はナイツに利用されて消されてしまった、と見るべきでしょう。
では、ナイツが美香を利用したのでしょうか?
これまでナイツは、玲音をワイヤードに引き入れ、玲音の周りで事件を起こしていました。これによって、玲音も徐々にナイツの存在に気づいていくことになります。
そこにこそナイツの目的はあるのかもしれません。
ナイツは、玲音に自分たちの存在を知らしめようとしている。そのために、今回は玲音の姉である美香を直接的にターゲットにしたのではないでしょうか。
どの道、美香にとっては不運以外の何物でもなかったでしょう。
玲音の部屋の出来事は何だったのか?
美香のストーリーと並んで難解さを極めたのが、玲音の部屋のシーンです。
ここでは、玲音の目の前に人形・神像・母・父が順番に現れ、玲音との対話を繰り広げるといったシーンでした。
注目すべきは玲音の成長です。
始め、人形と話していた頃の玲音は、子供っぽい口調が印象的でしたが、神像・母・父を経るごとに大人っぽい口調へと変化していきます。
またシナリオでは、この玲音の部屋は「過去」と表されておりますが、時系列的は不明な点が多いです。
しかし、第5話のラストのシーンから推測することは可能です!
ラストシーンでは、玲音がNAVI(パソコン)に向かって「今日は誰?」と話しかけています。
これはNAVIを通してワイヤードのユーザーと会話しているのですが、この会話こそ「玲音の部屋」で繰り広げられていたことだったのだと思われます。
玲音は始めはワイヤードの知識が無く、いわば幼稚園児のような存在でした。
しかし、ワイヤードでの交流を通して徐々に知識を付け始めます。まさしく「玲音の部屋」での成長と同じ現象です。
「玲音の部屋」の正体は、ワイヤードでの対話をイメージ化したものと考えられるでしょう。
ちなみに「玲音の部屋」では、ワイヤードが現実世界の上位階層であること、物事が起こる際には「預言」があることが玲音に教えられます。
これは今回、ナイツが行ったこととリンクします!
玲音に知識を入れているのもナイツの仕業である可能性は高いでしょう。
「預言」を実行するのは誰か
これまで不可解な事件を繰り返すナイツでしたが、第5話によってその目的も見えてきたように思えます。
それはモノローグで登場した神の「預言」を実行することです。神は、これ以上進化しない人間の可能性をワイヤードに見出しました。
預言を現実のものにするために事件を起こしているのがナイツなのだと思われます。
しかし未だ疑問に残るのは、神とナイツの暗躍に「岩倉玲音」という少女が巻き込まれていることです。
劇中では、現象のにはまず「預言」があるとされていました。玲音もまた神の預言を聞いています。
もしかしたら、玲音は「預言」を実行する「巫女」となる存在なのかもしれません。
脚本・小中千昭氏が担当した『ウルトラマンティガ』第3話「悪魔の預言」では悪魔・キリエル人が現れる前に預言者が登場しています。
そして第25話「悪魔の審判」では、預言者に加えて巫女も登場しました。
果たして岩倉玲音は「巫女」となる存在なのか。
ナイツや神との関係が気になるところです。
まとめ
今回は、『serial experiments lain』第5話「Layer:05 DISTORTION」のあらすじ・考察ポイントなどを解説しました。
第5話は今まで以上に、難解でホラー要素が強い回となりましたが、ナイツの目的など今まで不可解だった点が進展していく重要な回となりました。
ワイヤードに存在する神、暗躍するナイツ、知らず知らずのうちに巻き込まれる岩倉玲音。
この3者が今後どのように絡み合っていくのか、第6話も要注目です!